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青森地方裁判所八戸支部 昭和29年(ワ)146号 判決

原告 国

訴訟代理人 滝田薫 外三名

被告 市川政志 外二六九名

主文

一、被告(一)市川政志は別紙第一物件目録28、29及び31記載の土地につき、

被告(四)市川清は同目録34、35及び36記載の土地につき、

被告(五)林福蔵は同目録47記載の土地につき、

被告(六)市川サクラ、同(七)市川仁佐男、同(八)織笠吉治、同(九)市川直治、同(一〇)小笠原タガ、同(一一)市川チヱは共同して同目録39記載の土地につき、

被告(一二)盛田喜平次は同目録70、72記載の土地につき、

被告(一四)浜田留吉は同目録12、13、15、16、18及び19記載の土地につき、

被告(一六)市川初太郎は同目録45記載の土地につき、

被告(一七)小笠原倉松は同目録20、46記載の土地につき、

被告(一八)小笠原金之亟は同目録49、50、51、62及び63記載の土地につき

被告(一九)沼田銀次郎は同目録52、66、67、68及び69記載の土地につき、

被告(二九)市川吉松は同目録55、56及び57記載の土地につき、

被告(三〇)沼田勝、同(三六)平上子之松、同(一七八)沼口ハツエ、同(一七九)久保田たね、同(一八〇)沼口滝夫、同(一八一)沼口定夫、同(一八二)瀬川アサヨは共同して同目録58、59、60及び61記載の土地につき、

被告(三一)市川なよ、同(三二)市川義三郎、同(三三)市川オトヨ、同(三四)山端ハルヱ、同(三五)田嶋正義は共同して同目録64記載の土地につき、

被告(三七)小笠原武彦は同目録71、73記載の土地につき、

被告(三八)市川松之助は同目録1、2記載の土地につき、

被告(三九)小笠原長喜は同目録3、4記載の土地につき、

被告(四〇)小笠原喜藤は同目録5、6及び8記載の土地につき、

被告(四一)市川精志、同(四二)市川喜代治、同(四三)附田マサ、同(四四)市川キヨは共同して同目録9記裁の土地につき、

被告(四五)小笠原勝美は同目録17及び記載の土地につき、

被告(四六)小笠原福次郎は同目録21記載の土地につき、

被告(四七)市川喜三郎は同目録記22、23載の土地につき、

被告(四八)市川勝次郎、同(二三八)蝦名モミ、同(二三九)沼尻カツヨ、同(二四〇)藤枝サンコ、同(二四一)市川アキ、同(二四二)柴田ヨンコ、同(二四三)市川トシ市川ハヨ、同(二四八)市川貫一、同(二四九)市川キヱ、同(二五〇)浪岡松次郎同(二五一)市川佐太郎、同(二五二)沼山サイは共同して同目録24、25記載の土地につき、

各原告のための各所有権移転登記手続きをせよ。

二、被告(一二)小笠原秀吉外二八七名(別紙第二目録(甲表の(一)(二)及び乙表)記載の被告等)は、別紙第一物件目録27記載の土地につき原告のための各共有持分権の移転登記手続きをせよ。

三、被告(三)石田善兵衛は別紙第一物件目録30、33記載の土地につき被告(五)林福蔵は同目録37、38記載の土地につき、

被告(一二)盛田喜平治は同目録14、40及び41記載の土地につき、

被告(一五)浜田留吉は同目録43記載の土地につき、

被告(一五)市川英一は同目録44記載の土地につき、

被告(三六)平上子之松は同目録65記載の土地につき、

被告(四〇)小笠原喜藤は同目録7記載の土地につき、

各該当土地が原告の所有であることを確認する。

四、被告(二〇)小笠原ハツ同(二一)小笠原松三郎同(二二)小笠原賢三、同(二三)野田義人、同(二四)久保田オリヨ、同(二五)市川オリツ、同(二六)織笠オシヱ同(二七)小笠原多利、同(二八)小笠原サチ子は別紙第一物件目録10、11、53及び54記載の各土地が原告の所有であることを確認する。

五、被告(一)市川政志外二四七名(別紙第三目録(甲表及び乙表)記載の被告等)は、別紙第一物件目録26、42記載の各土地が原告の所有であることを確認する。

六、被告(一)市川政志外二三三名(別紙第四目録(甲表及び乙表)記載の被告等は、別紙第一物件目録48記載の土地が原告の所有であることを確認する。

七、訴訟費用は被告等の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、初め主文同旨の判決を求め、請求の原因として

一、原告は、旧海軍省大湊施設部の所管において昭和一九年頃、旧予科練用地として別紙第一物件目録記載の各土地をそれぞれ同目録買収時所有者欄記載の者から買受けた。その代金は、字淋代の土地は畑反当り一五〇円、原野反当り四〇円、字母衣平出生の土地は畑反当り一二〇円、山林反当り五〇円、原野反当り四〇円、用悪水路反当り四〇円と定め、同目緑26の土地は現況畑二一九八畝、原野七六一三畝一一歩、42の土地は現況畑一六一〇畝、原野一二二畝一三歩で代金合計一〇七、二三三円一九銭となり、これを〇昭和二〇年一月中、大湊海軍経理部より共有代理人浦野館村長垣内重雄宛に送金、これを共有者代表小笠原武千代が受領してその頃各共有者に分配し、その余の土地の分は代金合計金三二四九六円九九銭を一括して同じくその頃垣内重雄に支払い、各所有者が分配を受けたものであり、そして、同年一一月以降該土地は大蔵省東北財務局青森財務所において管理しているものである。

二、然るに同目録1乃至6、8、9、12、13、15乃至19、21乃至25、28、29、31、34乃至36、49、45乃至47、49乃至52、55乃至64、66乃至73の被買収者はいすれもその所有権移転登記手続をしない。そのうら、39の市川仁太郎は昭和二五年一二月二日死亡し、被告(六)市川サクラ、同(七)市川仁佐男、同(八)織笠吉治、同(九)市川直治、同(一〇)小笠原タガ、同(一一)市川チエが共同して、52、66乃至69の沼口金蔵は同二一年四月二六日死亡し、被告(二九)市川吉松が、55乃57至の市川喜七は同一九年一一月一八日死亡し、被告(二九)市川吉松が、58乃至61の沼口子野は同二八年一月一〇日死亡し、被告(三〇)沼口勝、同(三六)平上子之松、同(一七八)沼ロハツヱ、同(一七九)久保田たね、同(一八〇)沼口滝夫、同(一八一)沼口定夫、同(一八二)瀬川アサヨが共同して、64の市川三平は同二四年六月一〇日死亡し、被告(三一)市川なお、同(三二)市川義三郎、同(三三)市川オトヨ、同(三四)山端ハルヱ、同(三五)田嶋正義が、3、4の小笹原倉松は同二〇年一〇月二四日死亡し、被告(三九)小笹原長喜が、9の市川金次郎は同一九年一〇月一二日死亡し、被告(四一)市川精志、同(四二)市川喜代治、同(四三)附田マサ、同(四四)市川キヨが、24、25の市川才助は二二年一〇月九日死亡し、被告(四八)市川勝次邪、同(二三)蛯名モミ、同(二三九)沼尻カツヨ、同(二四〇)藤枝サンコ、同(二四一)市川アキ、同(二四二)柴田ヨンコ、同(二四三)市川とし、同(二四四)蛯名カヨ、同(二四五)市川三太、同(二四六)市川キン、同(二四七)市川ハヨ、同(二四八)市川貫一、同(二四九)市川キヱ、同(二五〇)浪岡松次郎、同(二五一)市川佐太郎、同(二五二)沼山サイが共同してそれぞれその登記義務を承継した。よつて関係被告等に各原告に対し、右土地につき所有権移転登記手続を請求する。

三、また、同目録27記載の土地の被買収者〔別紙第二目録甲表の(一)(二)記載の被告等と同乙表買収時所有者欄記載の者)等も原告に対し、その共有持分権の移転登記に応じない。そのうち、右乙表記載の被買収者は死亡し、その承継原因欄記載のように被告欄記載の各被告が当該登記義務を承継した。よつて、被買収者たる被告等及び承継者たる被告等に対し、各第二目録各表記載の割合の共有持分権の移転登記手続を求める。

四、また、同目録7、14、33、37、38、40、41、43、44及び65記載の土地の被買収者たる被告等はそれぞれ当該土地について所有権を主張し、同目録10、11、53及び54の被買収者小笠原石太郎は昭和二二年一月二六日死亡したが、(二〇)被告小笠原ハツ、(二一)同小笠原松三郎、同(二二)小笠原賢三、同(二三)野田義人、同(二四)久保田オリヨ、同(二五)市川オリツ、同(二六)織笠オシヱ、同(二七)小笠原多利、同(二八)小笠原サチ子はいずれも相続により右石太郎から右土地の所有権を承継取得したと主張し、また、同目録26、42記載の各土地についても別紙第三目録甲表記載の被告等及び同乙表記載の被買収者から承継したと称する被告等が、各共有権を主張し、もつていずれも当該土地に対する原告の所有権を争うので、該被告等に対し、それぞれ当該土地が原告の所有であることの確認を求めると述べたが、後昭和三三年三月三一日の口頭弁論期日において主文第二項記載の請求中、別紙第二目録甲表の(二)及び乙表の被告に対する請求、主文第四項の請求、主文第五項の請求中別紙第三目録乙表記載の被告に対する請求、主文第六項の請求中、別紙第四目録乙表記載の被告に対する請求をいずれも取下げると述べ、被告の主張に対し、原告の訴の一部取下により別紙第一物件目録26、27、42、48記載の土地に関する請求が、共有者の一部に対する請求となることは争わないが、必要的共同訴訟であることは争うと述べ、

訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、その理由として、原告は一部訴の取下をなしたが、これにより原告の請求は別紙第一物件目録26、27、42、48記載の土地に関しては共有者の一部を相手とすることとなるが、本訴請求は必要的共同訴訟であるから許されない。と述べ、

本案の請求に対し「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、

原告主張の被告等が、所有権移転登記手続に応じないこと、または原告主張の土地につき各所有権を主張していること、原告主張の様な相続関係のあつたことはいずれも認めるが、其の余の事実は否認する。とくに、別紙第一物件目録記載の各土地につき旧海軍との間に売買契約の成立した事実はなく、売買代金が支払われた事実もない。たゞ原告主張の頃、国から村民に対し一部金員が支給されたことはあるが、これは本件土地を戦時中海軍が使用した補償費として支払われたものであつて、原告主張の買収単価と称するもの、当時の近隣土地の賃借料に相当するものである。

よつて、原告の請求は失当である。

と述べ、原告の訴の一部取下に同意せず、

証拠〈省略〉

まず、被告の本案前の主張につき判断する。

原告は別紙第一物件目録26、27、42、48記載の土地に関する訴を一部被告につき取下げたるにより、原告の請求が共有者の一部に対する請求となつたことを争わないが、原告の請求は27土地に関しては、既に原告に所有権が移転したことにより共有者各人に対し各共有持分権の移転登記を求めるものであり、また、26、42、48の土地に関しては、原告の土地所有権を争う者にその確認を求める請求であるから、これを争う者を個々に相手方とすれば足り、偶々相手方らがその共有権を主張しているからといつて、原告の方からその共有者と主張する者全員を相手としなければならないものではなく、いずれも必要内共同訴訟ではないから、被告のこの点の主張は採用できない。

そこで本案につき判断する。原告提出の全証拠によつても、原告主張の売買契約成立の事実を個々の被買収者につき、一々直接に立証する証拠はない。然し乍ら、成立に争のない甲第四号証の一、同第六号証の一、同第七号証の一、同第一〇号証、同第一一号証の一、証人大沢秀雄の証言により真正に成立したと認める同第五号証、証人柳谷豊太郎の証言により真正に成立したと認める同第七号証の二、同第九号証の一、二、同第一一号証の二、証人阿保清の証言により真正に成立したと認める同第八号証、被告本人小笠原武千代の証言により真正に成立したと認める同第一二号証、証人新舘英志の証言により真正に成立したと認める同第一四号証、証人新舘寿の証言により真正に成立したと認める同一六号証、公文書であると認めるので成立の真正が推定される同第三号証の一、二、同第四号証の二、木人の署名捺印があつて成立の真正が推定される同第六号証の二、三と、証大大沢秀雄、同佐々木周悟、同樺沢功司、同柳谷豊太郎、同川仁賢一、同阿保清、同新舘寿、同新舘英志、同小比類巻金作の各証言に被告本人小笠原武千代、同林福蔵(第一回)、同市川吉松、同沼口銀次郎(第一回)の各尋問の結果の一部とを綜合すれば、昭和一九年頃、別紙第一物件目録記載の土地(以下本件土地という)につき海軍大臣から買収の訓令が出て、これに基き手続が進められ、同年春頃から夏頃にかけて当時の浦野舘村助役立会の下に測量がなされ、同年夏頃から翌二〇年夏にかけて施設建設の工事が行われ、その頃から海軍が予科練用地として使用したこと、その頃、被告小笠原武千代等数名の者が土地所有者の代表として三沢の海軍の施設部へ行つて本件土地の売買に関する交渉をし、その際売却単価の交渉も行われたこと、そうして、終戦後の同年一〇月頃、大湊海軍経理部(残務班)から、その支出費目を別紙第一物件目録26、42の土地の用地買収費として金一〇七、二三三円一九銭が、同じくその余の土地合計四五三反二畝六歩の買収費として三二、四九六円九九銭が支出されていること、そしてその金は、いずれも当時の浦野館村長垣内重雄名義で受領されて、その頃、被告小笠原武千代等によつて各被買収者に分配されていること、そしてその後原告においては、本件土地の管理を仙台財務局に移し、同年一一月一七日同局国有財産台帳正本に登録したことが認められる。これに反する証人小笠原一雄の証言並びに被告本人らの尋問中、別紙第一物件目録26、42を除く土地についての金員は受領していない旨の供述は前記証拠に照らし措信し難く、他に前記認定に反する証拠はない。そして以上認定の諸事実を、証人柳谷豊太郎の証言によつて認められる旧海軍における一般的な用地買収の手続経過に照合し、且つ、同証言にも認められる当時戦争が激しくなつて事務を急いだため簡易にしたり、手続の相前後している部分もあることを考慮に入れると、昭和一九年頃、海軍(原告)と当時の所有者等間に本件各土地の売買契約が成立して所有権が海軍(原告)に移転したことが優に推認できる。被告本人尋問中、各被告らが前記分配金を本件土地を海軍が使用した使用料といわれて受取つた旨の供述部分は前記各証拠に照らしにわかに措信し難く、かえつて、証人大沢秀雄、同佐々木周悟の証言によれば仙台財務局で本件土地を所管した後、登記手続を急ぐため、同局三沢管財事務所において部落の者に集つて貫つて話したことがあり、その際、本件土地が買収されたことについて異議を唱える者はなかつた(たゞ、再度払下げを要求して登記手続を渋る者がいた)ことが、また、公文書であると認めるので成立の真正が推定される甲第一五号証と、被告本人林福蔵(第二回)の尋問により真正に成立したと認められる甲第一八号証によれば、本件土地売却代金の他、地上立木に対する補償、その他の土地の使用に関する補償金も別途支出されていることが認められ、前記金員は単なる使用対価とは認められず、他に何ら前記代金が買収対価であることを疑わしむる証拠はない。

然らば、本件各土地は昭和一九年頃、原告が売買により取得したものであるところ、別紙第一物件目録1乃至6、8、9、12、1315乃至19、21乃至25、28、29、31、34乃至36、39、45乃至47、49乃至52、55乃至64、66乃至73記載の土地の被買収者等がいずれもその所有権移転登記手続に応ぜず、そのうち、39の市川仁太郎死亡により被告(六)市川サクラ、同(七)市川仁佐男、同(八)織笠吉松、同(九)市川直治、同(一〇)小笠原タガ、同(一一)市川チヱが共同して、52、66乃至69の沼口金蔵死亡により被告(一九)沼口銀次郎が、55乃至57の市川喜七死亡により被告(二九)市川吉松が、58乃至61の沼口子野死亡により被告(三〇)沼口勝、同(三六)平上子之松、同(一七八)八沼口ハツヱ、同(一七九)久保田たね、同(一八〇)沼口滝夫、同(一八一)沼口定夫、同(一八二)瀬川アサヨが共同して、64の市川三平死亡により被告(三一)市川なお、同(三二)市川義三郎、同(三三)市川オトヨ、同(三四)山端ハルヱ、同(三五)田嶋正義が共同して、3、4の小笠原倉松死亡により被告(三九)小笠原長喜が、9の市川金次郎死亡により被告(四一)市川精志、同(四二)市川喜代治、同(四三)附田マサ、同(四四)市川キヨが共同して、24、25の市川才助死亡により被告(四八)市川勝次郎、同(二三八)蛯名モミ、同(二三九)沼尻カツヨ、同(二四〇)藤枝サンコ、同(二四一)市川アキ、同(二四二)柴田ヨンコ、同(二四三)市川とし、同(二四四)蛯名カヨ、同(二四五)市川三太、同(二四六)市川キン、同(二四七)市川ハヨ、同(二四八)市川貫一、同(二四九)市川キヱ、同(二五〇)浪岡松次郎、同(二五一)市川佐太郎、同(二五二)沼山サイが共同して、それぞれ前主の権利義務を相続により承継したことは当事者間に争がないから、右被告等はそれぞれ前主の登記義務を承継しているので、右土地の被買収者たる被告等及び登記義務を承継した被告等はそれぞれ原告に対し、当該土地の所有権移転登記をなす義務(共同承継者は各共同して)があるので、これを求める原告の請求は理由がある。

次に同目録27記載の土地の被買収者等も原告に対し各その共有持分権の移転登記に応じないことは当事者間に争ないから別紙第二目録甲表(一)記載の被買収者たる被告らはいずれも原告に対し同表記載の持分につき右登記義務が存するのでこれを求める原告の請次に同目録7、14、33、37、38、40、41、43、44、65記載の土地についてはそれぞれ被買収者たる被告等が所有権を主張し、26、42記載の土地については別紙第三目録甲表記載の被告等が、また同目録記載の土地については別紙第四目録甲表記載の被告等が各共有権を主張して原告の土地所有権を争つていることは当事者間に争がないからこれらに対し各当該土地の所有権確認を求める原告の請求は理由がある。

以上、原告の請求はすべて理由があり認容すべきところ、被告は原告の一部訴の取下に同意しないので、その請求はなお係属するをもつてこれについて判断する。

原告は、訴の取下をした被告等は訴提起前に被告が死亡しているから不適法となると自ら述べている(昭和三三年一〇月二〇日付準備書面)が、本訴は、まず昭和二九年九月二二日訴状受付により係属したが、右訴状に被告と表示されたもののうちに死亡者があつたため、原告は昭和三〇年一一月二二日付訴状訂正の申立と題する書面をもつて、右死亡者の承継人に被告を改め、これに対して訴状の陳述がなされたものであつて、本訴は右承継人に対する請求として既に適法に係属したものである。

よつて、本案につき判断するに、これらの被告に対する関係においても、本件各土地が原告の所有に帰したこと前認定のとおりであり、うち、別紙第一物件目録27記載の土地につき、別紙第二目録甲表(二)の各被告及び乙表被買収者欄記載の者が共有持分権の移転登記に応ぜず、そのうち、同乙表記載の被告等が同表被買収者欄記載の者から相続により各権利義務を承継したことは当事者間に争ないところであるから、同甲表(二)記載の各被告は同表記載の各持分につき、また、同乙表記載の各被告等は同表記載の各持分につき(共同承継者に共同して)各原告に対し持分権移転登記をすべき義務があるからこれを求める原告の請求は理由がある。

次に同目録10、11、53及び54の土地について被告(二〇)小笠原ハツ、同(二一)小笠原松三郎、同(二二)小笠原賢三、同(二三)野田義人、同(二四)久保田オリヨ、同(二五)市川オリツ、同(二六)織笠オシヱ、同(二七)小笠原多利、同(二八)小笠原サチ子がいずれも被買収者小笠原石太郎より共同相続したと主張し、また、同目録26、42の土地については別紙第三目録乙表記載の被告等がそれぞれ同表被買収者欄記載の者より、同目録48の土地については別紙第四目録乙表記載の被告等がそれぞれ同表被買収者欄記載の者より各その持分を相続したと主張していずれも原告の所有権を争つていることは当事者間に争がないからこれら各被告に対し、それぞれ当該土地につき所有権の確認を求める原告の請求は理由がある。よつて、原告の請求はすべて認容し訴訟費用につき民事訴訟務第八九条第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 工藤健作 野村喜芳 潮久郎)

第一物件目録〈省略〉

第二目録甲表の(一)(二)〈省略〉

第二目録乙表〈省略〉

第三目録乙表〈省略〉

第四目録〈省略〉

第四目録乙表〈省略〉

被告目録〈省略〉

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